そもそもVAR(ビデオアシスタントレフェリー)は
2020シーズンから、Jリーグで本格導入されることが決まっていました。
対象となるのは主にJ1だけですが、その反響はすごく大きかったです。
結局コロナの影響で、該当試合は第1節のみとなりましたが
なぜJリーグはVARの導入を見送ったのでしょうか?
特に2節を終えて、川崎×鹿島の1点目が大きな波紋を呼んでおり、多様な意見が飛び交っています。
「VARルームが密になるから難しい」
「今からでもVARを実施するべきだ!」
「なんでVARを導入しないんだ!」
SNSなど見てても、この様な声が散見されます。
密室でのコロナ感染への懸念もVARを断念した理由の1つですが、それ以上の問題があるのです。
結論から言いますと、VARは『やらない』のではなく『やれない』のです。
なぜやれないか、単純にVARの人員不足です。
VARを担当できるレフェリーは?
意外と知られていないようですが、VARを務められるのは
「少なくとも6カ月間の必修訓練を受けたトップリーグの主審または元主審が努めなければならない」
とありますので、Jで主審の笛を吹くことが出来て、かつ必修訓練を受けている人だけということになります。
※JFAのサイトを参考にしています。
ちなみに主審は58人中37人がVARとAVAR(後述)を務めることが出来ます。
VARを導入するとなると、1試合に主審の数が2人以上必要になります。
また、VARを導入する際にはAVAR(アシスタントVAR)も通常1人必要です。
この資格はVARと違って、6カ月間の必修訓練を受けたトップリーグの副審や元副審も務めることが可能です。
しかし、100人ほどいる副審の中でAVARを務められるのはわずか18人しかいません。
別枠でVAR/AVAR担当審判員もいますが、VARも務められる人が2人、AVARだけ務められる人が4人しかいません。
ここまでのまとめ
JリーグでVARを担当できる審判は39人
※この39人はAVARも担当可能
AVARのみ担当できる審判は22人
本当に人手不足なの?
紹介してきた通り、1節あたり9試合が行われるJ1リーグでVARを導入するとなれば
大量の人員が必要になります。
先に主審が58人と紹介しましたが、決してその人数は多くありません。
J2の11試合、J3の8試合と重なれば、その人員の中で主審を選ばなければなりません。
そうなると、J1~J3までの28試合で、28人の主審と56人の副審、加えて28人の第4審が必要になります。
1日ですべての日程が消化されることはありませんが、現実的にその節で複数に渡って笛を吹くことはありません。
単純に主審58人のうち28人がどこかの試合を担当する。
副審99人のうち56人がどこかの試合を担当する。
残る73人のうち28人がどこかの試合で第4審として担当する。
さて、仮にVARを導入するとなれば残った45人とVAR/AVAR担当審判員の6人うち
J1の9試合分の18人を選んでVARとAVARを担当してもらうことになります。
あれ?計算上だと主審、副審の数は足りているように見えますね。
まぁそもそもコロナ中断の前はこのような割り当てで行う予定でしたし
当日主審を担当して、次の日も主審を担当することはなくても
例えばVARを担当した翌日、別の試合で主審をやるってことはあるみたいです。
ここまでのまとめ
J1~J3までの28試合について
VARなしの場合は、主審28人、副審56人、第4審28人
計112人必要
VARを導入すると、担当可能な審判は
VAR39人 AVAR22人であり
合わせて18人が担当するため
計130人必要
Jリーグの審判団は
主審58人 副審99人
計157人在籍+VAR/AVAR担当審判員6人
人数足りているように見えるけど、、、?
「先に人手不足と言っておきながら、ちゃんと審判の人数は足りてるじゃないか!」
そんなお声が聞こえてきそうですが、ちゃんと問題があるから間違いじゃないのです。
まず、上記はJリーグで笛を吹ける人をすべて入れた人数です。
ここで問題なのが、彼ら審判の中で
「職業 Jリーグの審判」である人はごく一部なのです。
簡単に言えば、Jリーグとプロ契約している審判が少なすぎるのです。
主審で12人、副審で4人しかいません。
プロフェッショナルレフェリー(PR)は契約金で収入が保証されていますが(1000万~2000万)
彼ら以外の審判は1試合担当するごとに手当として報酬が発生する仕組みです。
1試合当たり、J1の主審で12万、J1の副審で6万
カテゴリが下がると、その額は半分になると思って下さい。
つまり、仮にJ1の全34節で主審を担ったとしても年収400万ということになりますし
PRもいる中、34節全ての試合を担当できる審判がいたとしてもごく一部でしょう。
副審に限っては34節全て担当しても年収200万ほどです。
とてもじゃありませんが、審判だけで食べていくのは難しいことがわかります。
つまり、彼らは他に仕事を持っています。
働きながら審判の仕事も行うとなれば様々な問題が出てきます。
移動の問題だったり、仕事を抜けられなかったり。
また、長距離の移動となればコロナ感染のリスクもありますので
家庭や職場を考えれば、受託できない場面が出てきてもおかしくないでしょう。
そのような中でVARを導入して各試合担当できる審判を探すとなると
人員の確保が難しくなることが想定されるのです。
今年のJリーグは、試合日程の消化が最優先です。
審判団が足りない中、無理してVARを導入する。
その結果VARを実施できない試合が出るかもわかりませんし
それこそコロナ感染のリスクを背負うかもしれません。
最終的な結論ですが
審判団の生活と安全を考えた結果、人員確保が困難になり
今年はVAR見送りになったのだと思います。
ちなみに、主審の中でJ1の笛を吹いたことが無い審判は28人にも及びます。
誰でもJ1の主審、副審を担えるわけではないのですから、単純な人数が足りている足りていないという話では無いことだけ加えておきます。
(余談)Jリーグの審判問題 川崎×鹿島を踏まえて
コロナ禍において、VARを導入するとなれば
より審判団の待遇と安全を保障する必要があるように思います。
お金の問題か、質の問題か、はたまたその両方が必要かわかりませんが
プロフェッショナルレフェリー(PR)が増えることで審判団はよりサッカーに注力できるようになることでしょう。
もちろん、審判の質の向上に直結するかはわかりません。
例えば、野球の審判なんかたまにとんでもないミスジャッジをしますよね。
よそ見していて見ていなかったのに判断したり
彼らは給与が保証された審判ですから、気の緩みが見えることがあるのかもしれません。
私はあまり好きでは無い考えですが、Jリーグで考えると
審判はPRを目指してジャッジを行うため、自身が質の高い審判であるとアピールする必要があります。
そのような環境は、質の向上を図るうえではいいのかもしれませんね。
ちなみに私は審判団の生活をJリーグが保証したうえで試合に臨んでもらえるよう整備した方がいいと思ってます。
もらえるかわからない人参をぶら下げて
審判を薄給で務めていただくのは酷だと考えています。
だとしても、誤審に対して怒りの声が出るのは当然ですよね。
私もベガルタが誤審によって勝ちを逃したらやり場のない怒りを覚えること間違いなしです。
よく、「選手が人生をかけて戦っているのだから、審判も、、」という声もありますが
その審判は(PR以外)人生をかけれる環境でないことは知っておくと今後見方がかわるかもしれません。
例えば誤審が起きた川崎×鹿島戦について、
五十嵐副審と大川副審のどちらのサイドかわかりませんが、彼らはPRではありませんし
コロナによる長い中断期間の中、本業をこなしながらJリーグ再開のためにトレーニングを重ねて準備してくれたのでしょう。
これだけでも通常は称賛されるべきことだと思います。
ちなみに、飯田主審はPRです(小声)
だから叩いていい訳ではありませんよ!
もちろん私たちJリーグファンからも素晴らしいゲームコントロールを見せた審判は称賛することや
そうでない場合に声を上げることは、Jリーグのレベルアップのためには必要なことだと思います。
ですが審判の方々は厳しい条件の中でJリーグを支えてくれてることも、ここで紹介させてください。
繰り返しますが誹謗中傷は絶対にダメですよ。
ちなみに色々審判の情報書いてきましたが、選手名鑑に審判のことも載っていますよ!
興味があれば見てみてください。
Jリーグ選手名鑑2020 J1・J2・J3 (エルゴラッソ特別編集)何か気になった時にすぐ見たい人はエルゴラ
じっくり情報を眺めたい人はサカダイがおすすめです。
私はどっちも持ってます(笑)
さて、今日はベガルタの話じゃないですが
明日は大事な浦和戦ですので(関係ない)
FORZA 仙台!
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